異世界転生

エリカは19才の女子大生。 女神様の手違いにより死亡したので、異世界に転生させてもらうことになった。

転生モノでは恒例のチュートリアルで、エリカは女神様からチート能力に関する説明を受け、一通りの装備をもらう。 金色の鞘に入った長剣、全身を覆う漆黒の皮鎧、そしてシンプルな銀色のサークレットの3つだ。

「あなたの第二の人生に幸あれ!」

女神様の言葉に送り出されて、エリカは異世界へ転生した。


転生後、目を見開いたエリカの目に写ったのは緑色だった。 そして手足、というか体をどこも動かせない。 まるで体全体を何かにギュッと抑え込まれているようだ。

何これ? エリカは目を白黒させた挙げ句に目のピントを合わせ、緑色の正体が地面に生える雑草であることに気付いた。

やがてエリカは状況を把握する。 彼女の口元から下、ほぼ全身がズッポリと地面に埋まっていたのだ。

傍から見ればエリカの鼻から上の部分だけが地面から覗いた状態である。 女神様はうっかりミスでエリカを地中に転移させてしまったらしい。

「なんてそそっかしい女神様なのかしら。 女神様の手違いで私は死んだというのに、また手違い。 一歩間違えれば窒息死だったわ」

考えようによってはしかし、鼻が地面から出ていただけでも僥倖である。「頭の先まで地面に埋まってたらどうなってたのかしら?」

エリカは小一時間ほどもかけて、やっとのことで地面から這い出た。

体中から土を払い落として周囲を見回すと、そこは草原だった。

体中から土を払い落として周囲を見回すと、そこは草原だった。 「女神様の手違いの産物がセミの幼虫のように草原に無数に埋まってたりして...」 そんな考えがチラリと思い浮かぶ。

益体もない思考を頭から振り払い遠くに目をやると東に町が見える。 まずはあの町へ向かおう。 冒険者ギルドに登録しておカネを稼いだりレベルを上げたりするんだ。 エリカは東へ進み始めた。


草原を歩いていると、草むらの中から突然、何かが襲いかかってきた。 「きゃあっ!」 身をよじってかわしつつも、エリカの眼はその正体を的確に捉えている。 襲ってきたのは角の生えたウナギだった。

「ふつうはウサギでしょっ!?」 エリカはツッコミを入れつつ、再び飛び跳ねて襲いかかってきたウナギを長剣でばっさりと斬り落とした。

...つもりだったが、女神様からもらった剣は思いのほか切れ味が悪く、ウナギの体は切断されなかった。 しかし、エリカが振るった剣がまともに当たったため、ウナギは地面に叩きつけられて即死した。

「あっ、殺しちゃった。 食べると美味しいかもしれないわね。 この世界の食材にも慣れておかなくちゃ」

エリカはテキパキと火を起こすと、木の枝に刺したウナギの死体を焙り焼きにした。 焼きウナギの香ばしい匂いが周囲に漂う。

「もう火が通ったんじゃないかしら。これだけ良い匂いがしてるんですもの」

美味そうな匂いに我慢できず、焼きウナギにかぶりつくエリカ。

「アチっ! でも美味しい。 小骨が少し邪魔だけど」

ウナギを両手で掴んでパクパクと食べるエリカ。 ウナギを食べ始めて、自分が空腹だったことにエリカは気付く。 地面から這い出るのに相当のエネルギーを費やしていたのだ。 ウナギは脂が乗っていてとても美味しかった。

ウナギを食べ終えたエリカは満足げに呟く。「ふう、美味しかった。 やはり毒とかはなかったようね」



町に到着したエリカ。 町中には多くの人が行き交っている。 朝の賑わいというやつである。

通行人に教わった通りに歩くと冒険者ギルドが見つかった。 ギルドの看板には『ハマジリ町 冒険者ギルド』と書かれている。

エリカは入り口の階段を登り、大きなドアを開けてギルドの中に入った。

まず目に付くのはクエストの依頼書が掲示されている掲示板だ。 数名の冒険者が掲示物を熱心に見ている。 屋内は2階建てで、2階部分は飲食店だ。

エリカは1階にある受付で冒険者登録を済ませるとクエスト掲示板へと足を運んだ。 彼女の希望するクエストはモンスター退治である。 対人戦闘でもいい。 とにかく女神様にもらったチート能力を活用したいのだ。

しかし、そういう依頼はどれも冒険者ランクとしてE以上を要求している。 冒険者として登録したばかりのエリカのランクはFなので条件を満たしていない。

さらに多くのクエストはパーティー単位で冒険者を募集しているが、エリカはパーティーを組んでいない。

困ったエリカはギルド職員に相談することにした。 エリカの登録を担当した職員で、たしかマヒュロとかいう名前だった。

「なるほど。 エリカくんはフィートを活かせるクエストをやりたいんだね」

マヒュロのいう「フィート」とはチート能力のことである。 一部の人だけが持つ特殊な能力のことを、この世界では「フィート」と呼ぶのだ。

「なんとかなりませんか? 一文無しなんです」 女神様はエリカに剣と鎧は与えたものの生活費は与えていなかった。

「他の冒険者とパーティーを組めばいい。 エリカくんの冒険者ランクが足りていなくても、パーティーのランクしだいでクエストが可能になる」

「でも、メンバーを募集してるパーティーなんて、そうそう都合よく見つかりませんよね?」

「うーん、たしかに」 ギルド職員マヒュロは思案しながらエリカのファイルに目を通す。 ファイルには、登録時に検査したエリカのステータス値が記載されている。

「ふむ、キミの筋力も反応速度もレベル1とは思えないな。 すでにレベル30の中堅クラスに相当する水準だよ。 末恐ろしいね」とマヒュロは苦笑いじみた表情を浮かべる。

「エリカくんは冒険者が未経験だということだけど、この強さならランクDのパーティーでも大丈夫だ。 紹介してあげるから少し待ってなさい」


小一時間ほど待たされて紹介されたのは『鷹の爪』という名称のパーティーだった。

『鷹の爪』のメンバー数は4人。 戦士が2人に魔法使いが2人という構成である。 そこにエリカが加わることになる。

「よろしく、エリカちゃん。 期待の大型新人だそうだね」

「はじめまして。 よろしくお願いします」

エリカは『鷹の爪』のリーダーと挨拶を交わした。 リーダーは理知的な印象の若い男性で、名前をパグルという。 パグルは支援魔法と回復魔法を得意とするレベル20の魔法使いだ。

「じゃあ早速だけどクエストに出かけようか」

「どんなクエストなんですか?」

「クエストの現場へ向かう道中でおいおい説明するよ。時間が惜しい」

こうして『鷹の爪』に加入したエリカは、仲間たちと冒険者ギルドを出た。

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