福引きの木③

台所を出て書斎に入る。 PCを起動して株価のチェックなどを行う。 よしよし、持ち株はすべて値上がりを続けているな。 株式投資は相変わらず順調だ。 うまく行き過ぎていて怖いほどだ。

書斎でしばらくの時を過ごすが、オレンジ色の小さな文字は現れない。 やはり眼ではなく種の側に原因があるのだろう。 私は書斎を出て庭に向かった。 PCで疲れた目を植物の緑で癒やすのだ。

庭に出ると私の目は自然と、あの正体不明の果実の木へと向かう。

さきほどオレンジ色で表示された「福引きの木の実の種」という名前。 あの種が「福引きの木の実の種」だというなら、私が食べた果実は「福引きの木の実」で、この木は「福引きの木」ということになるのだろうか?

そう考えながら正体不明の木を眺めていると、私の疑問に答えるかのように、木の下に「福引きの木」と表示された。 オレンジ色の小さな文字だ。 はは、やっぱり「福引きの木」という名前なんだな。 突拍子もない状況を少し不安に思いながらも、木の名前が思った通りであることに私は軽い笑い声を立てた。


オレンジ色の名前が見えるという現象が始まったのは、正体不明の実を食べた直後からだ。 そして、この現象は正体不明の実の種とその木だけに起こる。 この現象は一体なんなのだ。 いくら考えてもわからなかったが、実害も無さそうなので私は謎の追求を諦めた。

しかし、それから数ヶ月を過ごすうちに、オレンジ色の名前の正体が自ずと明らかになった。 どうやら私が見知らぬ物を見たときに、その物の名称が表示されるようなのだ。 「福引きの木の実の種」と「福引きの木」でしかオレンジ色の名前が表示されなかったのは、あの日に家の中で目にした物のうち私が正体を知らなかったのがその2つだけだったからだろう。

この能力では、正体不明の物の名称しか分からない。 効果・使い方・価値・性質などは一切分からないのだ。 鑑定能力と呼ぶには物足りない能力だが、それでもこの能力のお蔭で推測できたことがある。

それは、私が株式投資で成功しているのが、あの正体不明の果実を食べたお陰であるということだ。 「福引きの木」という名前からして、あの木に生る果実を食べると何らかの効果を得られるのだと考えられる。 おそらく私は、昨年食べた果実で「投資能力」を入手し、今年食べた果実で「鑑定能力」を入手したのだろう。

どちらの能力も非常に現実離れしているが、いずれもその存在を否定できない。 株式売買の勝率が100%であったり見知らぬ物の名前が表示されたりするのが私の気のせいであるはずがないからだ。

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