福引きの木②

墜落事故によりニポン航空の株価は60%も下落した。 一昨日にニポン航空の株を売っていなければ、私は70万円超の損をしていたことになる。 墜落先が小学校ということもあって、大阪国際空港が市街地の真っただ中で運営を続けていることが問題視され、大阪国際空港は廃港予定である。


その後も、株の売買において私の行動を左右する衝動は頻繁に生じた。 私はそのたびに衝動に従って売買し利益を得た。 何度も衝動に襲われるうちに私は衝動を信頼するようになり、売買の金額は大きくなっていった。

1年後、私は億単位の金額を取引していた。 金額だけを見ればプロのトレーダーである。 取引金額が増えるにつれて利益も増え、私の生活は豊かになっていった。 自宅を改築し、衣服を新調し、光熱費を気にせずエアコンを使い、カニ・握り寿司・黒毛和牛・白桃・巨峰を食べ放題という夢のような暮らしだ。

人生がこんなに順調になったのはいつからだろう? そうだ、あの正体不明の赤い果実を食べたときからだ。 思い起こせば、あの果実を食べたのと「衝動」を感じるようになったのは同じ日ではなかったか? ちょうど今から1年前だ。

果実と言えば、あの正体不明の木に今年も1つ実が生っている。 赤く熟して美味そうだ。 今日にでも食べることにしよう。 今の私には白桃や巨峰を好きなだけ食べるだけの資産があるが、それでもあの果実はぜひ食べたい。


この正体不明の果実を食べるのは2度目だ。 そして、去年この果実を食べた後で具合が悪くなることもなかった。 私はいささかの不安も感じずに、もぎたての果実をにかぶり付いた。 果皮にプツっと歯が入り、果汁が口内に溢れ出す。 去年よりも少し熟していて甘味が強いが、やはり美味い。

この果実をもっと食べたいものだ… 果実を食べ終えた後にそう思いながら、皿の上に残された果実の種を見る。 果実の中心に入っていた大きな種である。 この種を庭に植えてみようか? でも、植えた種から芽が出て育ち、実を生らせるまでに20年もかかるしな。

この果実はやっぱり市販されてないのかな? どこかの店で売られているにしても、1本の木に1個しか実が生らない希少果実だから高価なことだろう。 スモモに似ているがスーパーで見かけるスモモとは明らかに別種の果物だ。

種を見ながら考え込んでいると、視界に映る種の下に「福引きの木の実の種」と読めるオレンジ色の小さな文字が表示された。 眼がどうかしてしまったのか? 種から視線を外すとオレンジ色の文字も消える。 種に視線を戻すとまた文字が見える。文字が表示されるのは、この種を見たときだけだ。

眼に異常が生じたのではなく、この種に何らかの不思議な性質があるということか。 少し時間を置き、あらためて種を観察してみようか。 私はしばらく種のそばを離れることにした。

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