乙女の尿意

エリカとサクランヌが野営地にさらわれてきて数時間が経過した。 その間、2人はずっと放置されていたが、やがてエリカが頭痛と吐き気を抑えるために飲んだ薬の効果が切れてきた。

薬はエリカの荷袋に入っているが、荷袋は取り上げられて別の場所に放置されている。 エリカは薬を持ってきてくれるよう男たちに頼んだが、「うるせえ」と怒鳴られただけだった。 エリカがどれだけ辛かろうが彼らの知ったことではない。

「大丈夫? エリカちゃん」

サクランヌの問いにエリカは頷くが、実は全然大丈夫ではない。 サクランヌにしても、そのことを分かったうえで声を掛けずにいられなかったのだ。

◇◆◇

男たちに捉えられてからサクランヌは何度か魔法を使おうとしたが使えなかった。 2人を縛る縄に魔法を封じる作用があるようだとサクランヌは言う。 サクランヌの水たまりが後を付いて来なかったのもそれが原因だと考えられる。

サクランヌによると、この男たちはシルヴァリンの密猟者である可能性が高い。 シルヴァリンは例外なく見目麗しいため人身売買のターゲットとなりやすいのだ。 この異世界でも人身売買は犯罪とみなされるが、非合法の人身売買は行われている。

◇◆◇

やがて男たちの1人がやって来て、「食事だ」と言ってエリカとサクランヌの前にトレイを置いていった。

トレイに載っているのは、野イチゴのような果実が数個と、乾パン、水である。 水は浅い皿に入っている。 後ろ手に縛られたままで飲み食いしろということか。

非常食と大差ない粗末な食事だが、エリカにはまったく問題でなかった。 呪いによる吐き気と頭痛のために食欲がなかったからである。 しかし喉は渇いていたので、エリカは皿に入った水を猫のように舌ですくって飲んだ。 サクランヌは隣で野イチゴを犬食いしている。

野イチゴを食べ終えたサクランヌが、ふと思いついたように言う。

「ねえエリカちゃん、それ霊泉で汲んできた水かも。 ここは霊泉に近いから」

「だったらいいわね」

それで呪いが解ければフィートも戻って来るのかな? 今フィートがあったらスゴく心強いのに。 せめて、この体調の悪さだけでも治って欲しい...

◇◆◇

しかし、水を飲み終えて3時間近くが経過しても、エリカの頭痛も吐き気も治まらない。 サクランヌの憶測に密かに期待していたエリカは、サクランヌに聞こえぬようコッソリと溜息をついた。

◇◆◇◆◇

◇◆◇◆◇

エリカとサクランヌが捕獲されたのは昼頃のこと。 それ以来、2人は後ろ手に縛られて地面に放置されたまま。 そろそろ夜になるが依然として放置である。

エリカはもはや思考すら放棄してグッタリと地面に横たわっていたが、そんな彼女の中にも行動の原動力となるモノが芽生え始めていた。 尿意である。

けっこう前からエリカは多少の尿意を覚えていたのだが、その時点ではまだ排尿を具体的に検討する必要性を感じていなかった。 多大なる心身の苦痛の前では、多少の尿意など取るに足りないものでしかなかったのだ。

そんな尿意がちょっと前からエリカの中で存在感を示し始め、今ではもう切実にトイレの必要性を感じていた。 ぐずぐずしていると、ここで漏らしてしまいそうである。

エリカは恥ずかしさを押し切って最寄りの男 ―たしかシンジロという名前だ― に訴えた。

「あのっ! おトイレに、おトイレに行かせてくださいッ!」

「うるせえ」

「もう本当に我慢できないんです!」

「ちっ、仕方ねえなあ」

そう言ってシンジロはエリカを立たせて、野営地の一隅へと連れて行った。

「おら、ここでしな」

しかし、この場所はキャンプの照明に照らされ、野営地全体から丸見えである。 乙女の排尿スポットには適さない。

「あの... もう少し陰のほうでお願いします」

エリカの嘆願を聞いたシンジロはニヤリといやらしい笑みを浮かべる。

「ダメだ。 ここでしろ。 それが嫌ならオモラシするんだな」

オモラシはあり得ない。 オモラシで汚れた衣服でサクランヌの隣に戻るなんて耐えられない。

エリカは覚悟を決め、その場でオシッコをすることにした。 革鎧と足縄に妨げられながらもエリカは、なんとか排尿可能な体勢を確立すると尿意を解放した。

ジョロジョロジョロ。

あー、気持ちいい。 頭痛も吐き気も忘れて、エリカはしばし排尿の快感に身を任せる。

排尿を終えてズボンを元に戻して立ち上がったエリカ。 気のせいだろうか? 排尿が終わっても頭痛と吐き気が戻って来ていない気がする。 それに#目眩__めまい__#も... こうして立っていても目眩がしないのだ。

この状態がずっと続いて欲しいな。 そう願いつつ、傍らに立つシンジロにふと目を向けると、彼はやけにギラギラした目つきでエリカを見ていた。

やだ、この人。 なんか怖い。

シンジロがエリカの左腕を掴む。

「もう我慢できねえ。 隊長、この女やっちまっていいですか?」

やっちまうって何?

「好きにしな。 そんな色気のねえ女、どうせ大した値も付かねえしな。 輸送の手間を考えれば、ここで処分しちまってもいいな」

隊長の言葉を聞いて他の男たちも騒ぎ出す。

「じゃあオレも」「色気のない女だが」「溜まってる今なら」「どうせ始末するなら」「壊すんじゃねえぞ。 ここにはまだ何日か滞在するんだ」

男たちの言葉の断片から、エリカは自分の身に何が起ころうとしているかを把握した。 そして反射的に逃げ出そうとするが、彼女の足を縛るロープが逃走を妨げる。

逃げ出そうとしてつんのめったエリカの左腕をシンジロが乱暴に引き戻す。

「逃げるんじゃねえっ」

そしてエリカの胸を押して地面に突き倒すと、エリカに馬乗りになり彼女の下半身を覆う皮鎧と衣服を剥ぎ取り始める。

そうこうするうちに他の男たちもエリカに群がって来た。

「縄が邪魔だ。手も足もほどいちまえ」「そうらほどけた。 抵抗されないように抑えつけとけ」「クソっ、鎧が邪魔だ」

エリカは久々に手足の縄をほどかれたものの、男たちに手首と足首を抑えつけられ鎧も脱がされ、彼女の貞操を守るのは今や衣服だけである。 エリカの額には汗がにじんでいる。

しかし、そんな状況であるにもかかわらず、エリカは不思議と心穏やかであった

なぜ心穏やかなのか? なんだか気分が良いからである。 なぜ気分が良いのか? それは... 頭痛と吐き気が治まっているからである。 そう、エリカはすっかり具合が良くなっていたのだ。

それに伴い自信も回復していた。 不思議なことにエリカは、さっきまであれほど恐ろしく感じていたこの男たちをもはや脅威とは感じていない。

「ふうっ、邪魔な鎧だったぜ」「そんじゃ、まずオレからだ」「さっさと剥いちまえ」

うるさい男たちね。

エリカはまず右足を激しく揺さぶった。 すると右足を抑えつけていた男は、突如として襲い来た恐ろしい力に強く揺さぶられて、エリカの右足から手を離してしまった。 「うわっ。何事だ!」

右足担当の男は自分を揺さぶった強大なパワーがエリカの華奢な体から生み出されたと信とはじられず、狐につままれたような顔で地面に尻もちをついている。 まさにビックリ仰天である。

エリカは自由になった右足で、右腕担当の男の脇腹にドムっと膝蹴りを叩き込んだ。「うぐっ」 男は膝蹴り一発で悶絶し、エリカの右腕を離してしまう。

右手まで自由になったエリカの次のターゲットは、左腕を担当する男だ。 エリカは右手で握り拳を作ると、 左腕担当者の頭頂部をしたたかに殴りつけた。 ガツンッ。 人体の急所を強打されて左腕担当者も昏倒する。

彼女の体に群がった5人の男のうち残るは2人。 左足を担当する男と、エリカの両足の間に入り込んで彼女のズボンを破こうとしているシンジロだ。

ズボンを破かれてはたまらない。 代えのズボンを持ってきていないのだから。 エリカはシンジロの頭部を両手で抱えて固定すると、彼の頭頂部に自分のオデコを激しく叩きつけた。 ゴチーン。 エリカの強烈な頭突きに、シンジロは一撃でノックアウトだ。

最後に残るは左足担当者。 だが彼は、シンジロがやられているうちにエリカの左足を離して後ろに飛び退っていた。

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