酒場にて

エリカとサクランヌは盗賊団に囚われていた5人をハマジリの町まで護衛して戻った。

5人の身柄を冒険者ギルドに託し、盗賊退治のクエスト報酬を受け取ったエリカとサクランヌは今、ギルド2階の酒場で一休みしている。

「ぷはーっ、美味しい!」

ゴキュゴキュとビールを一息で飲み干したエリカは空になった中ジョッキをテーブルにドスンと降ろす。

「仕事の後の一杯は格別だよね」

そう言うサクランヌはミネラル・ウォーターで喉の乾きを癒している。

「それにしても報酬が150万ゴールドって、ランクBクエストは稼げますね」

「今回の盗賊退治はランクBじゃなくてランクCのクエストだよ。 でも、本来なら6人でやるようなヤツだから良い稼ぎになったね」

「分け前が増えるのはいいけど、パーティーが2人だけだとやっぱり少し大変じゃないかしら?」

「そんなことないよ! 水も増やしたし! 次に今回と同じような盗賊団と戦っても絶対もっと楽に勝てる」

サクランヌが言う「水」とは、彼女が引き連れている水たまりのことである。 サクランヌは盗賊団が根城にしていた廃寺の井戸水をいたく気に入り、引き連れる水たまりをもう1つ増やすことに決めたのだ。 サクランヌの足元の床には現在2つの水たまりが広がっている。

「水たまりを2つも同時に操れるんですか?」

「新しい水が私の魔力や行動パターンに馴染むまでは上手に操れないね。 使ってるうちに水に魔力が染み込んで動きが素速くなるし、水たまりが私の行動パターンに慣れれば、操るな呪文も短くて済むんだけど。 ある程度は自動で動くようにもなるよ」

「ふふっ、まるでペットみたい」

「ペットは飼ったことないけど、飼ったらこんな感じかもね」

「この町で水を連れてる人ってサクランヌさんしか見かけませんけど、他の人は水をペットにできないんですか?」

「できるはずだよ。 でも、人間は水魔法を好まないから。 人間が使う水魔法は何故か決まってウォーター・ボールなんだけど、ファイヤー・ボールなんかに比べて破壊力がショボいでしょ? 」

「ウォーター・ボールって水の玉をぶつけるだけですもんね」

「そうそう。 だから人間に水魔法は不人気。 シルヴァリンなら私以外にも水を連れて歩く者がいるよ」

「そう言えばシルヴァリンって何なんですか?」

「あれっ、エリカちゃんはシルヴァリンを知らない...? のも不思議じゃないか。 転生者だもんね。 シルヴァリンは森に住む種族。 長命で知られ、魔法を得意とするの」

「チョウメイってなんですか?」

「長生きってことだよ」

「あ、その長命ですか。 するとサクランヌさんは子供に見えるけど...」

「そんじょそこらの老人よりは長く生きてるね」



2人が話し込んでいると、他の客が酒場へとやって来た。 白い顎ヒゲが印象的な初老の男性である。 厳つい大きな体と隙のない身ごなしがエリカの注意を引く。 この人、ただ者じゃないわね。

男性を見てサクランヌが声を上げる。

「あっ、ベイジン」

「おおっ、サクランヌか。 酒場にいるとは珍しい。 元気にしていたか?」

「うん。座りなよ、私の隣」

男性はエリカたちと同じテーブルの椅子に腰を降ろす。 サクランヌとずいぶん親しげな様子である。

「この戦士はお前のパートナーか?」

「そうだよ。 エリカって言うんだ」

サクランヌに紹介されて、エリカは男性に会釈する。

「そうか、新しいパートナーが見つかって何よりだ」

「エリカ、この人は私の以前のパートナー。 元Aランクの戦士だよ」

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