神器に秘められし能力

休憩を終えたエリカとサクランヌは、廃寺の本堂へと入った。 盗賊団が奪った財宝を期待してのことである。

本堂で見つかったのは、財宝のほか食料品、日用品、武器・防具の類、そして地下牢に閉じ込められていた5人の虜囚だった。

盗賊団に囚われていたのは若い女性が3人に、若い男性が1人、それに中年男性が1人。 若い女性3人が囚われていた理由は明白だが、男性2人はどういう理由で囚われていたのだろうか?

尋ねてみると、中年男性はコックだった。 盗賊団の料理を作らされていたのである。 そして若い男性は『アイテム鑑定』のフィートを持つがゆえに囚われていたのだという。 この男性は、盗賊団が略奪してきた武具・防具の性能を調べさせられていたのだ。

その若い男性の目がエリカに釘付けになっていた。 男性はスラリと背が高く、茶色の髪と同じく茶色の優しそうな瞳の持ち主だ。 虜囚生活による疲労をにじませてはいるが、笑えば相当に魅力的となるに違いない顔立ちである。 エリカの好みである。 そんな彼のブラウンの瞳がエリカを捉えて離さない。

エリカは19才。 年頃の娘だ。 魅力的な異性に強い視線を投げかけられて意識しないはずがない。 ほのかに頬を染めてエリカは尋ねる。

「あの... 何か私にご用ですか?」

「ああ、じろじろ見ちゃってゴメンね。 もしよかったら...」

もしよかったら何だというのかしら? デートのお誘い? エリカ、ドキドキしちゃう!

頭の中では色々を考えるが、エリカが澄ました顔で口にするのはただ一言。

「なんでしょうか?」 なんでも言ってちょうだい。

「もしよかったら、キミの装備をじっくりと拝見させてもらっていいかな?」

え、装備? ハイケン??

「どういうことでしょうか?」

「あ、そうだよね。 いきなりこんなこと頼んでも変な人だよね。 僕の名前はロースー。 僕は『アイテム鑑定』のフィートを持っていてね。 キミの装備からとても強い力を感じるんだ」

あー、ああ、なるほど。 そういうことね。 いちおう神器だもんね、私の装備。アイテム鑑定人が反応してもおかしくはないかも。

「そういうことでしたら、存分にご覧くださいませ」 装備だけじゃなく中身も見て? あなたにならエリカのすべてを見せてあげるわ。



真剣な眼差しでエリカの装備を吟味するロースー。 ときおり、「ふーむ」やら「ほほう」などと感嘆の声を上げながら、エリカのサークレット、全身革鎧、そして神剣へと視線を走らせてゆく。

ロースーは鑑定を終えてエリカに謝意を述べる。

「いや、ありがとう。 とても素晴らしい装備を拝見させてもらったよ」

「どういたしまして。 私の装備にはどんな効果が備わっていまして?」

「とても素晴らしい効果だよ」

「えっと、具体的には...?」

「詳細な情報は30万ゴールドになります」

エリカは呆気に取られた。 装備を見たいと言うから見せてあげたのに鑑定結果が有料だなんて! しかも金額がやけに大きい。一桁間違えてんじゃないの?

ロースーは悪びれずに言う。

「装備を見せてくれたことには感謝する。 でも、『アイテム鑑定』は僕のメシの種だからね。 鑑定結果を無料で明け渡すわけにはいかないのさ」

ロースーの言い分にも一理あるような気はする。 しかしエリカはいまいち納得できなかった。 盗賊団から救い出してあげたし、装備も見せてあげたのに!

「エリカちゃん」2人の会話を聞いていたサクランヌがやって来る。手には革袋を持っている。「これで支払えばいいよ。 盗賊団が溜め込んでた金貨」

「でも、それって鑑定代を支払うってことですよね? この件に関しては、義理とか人情とかも考慮すべきだと思うんです」

「細かいことは言いっこなし。 早く町に帰ろう?」

「さすがはシルヴァンヌ。 世慣れていらっしゃる」

ロースーは優雅な手付きでサクランヌから金貨の詰まった革袋を受け取ると、エリカに向き直った。

「それでは鑑定結果をお伝えしますね。 まず、その金色の剣には、2つの魔法がかかっています。 1つ目は、決して損壊しないという魔法。 どんなに硬い物を切ろうと刃こぼれ一つしません。 そして2つ目は、持ち手の能力に応じて切れ味が増してゆくという魔法です。 エリカさんが強くなるほどに、剣の切れ味が増すのです」

そこまで一息に喋ると、ロースーはエリカの目を見て厳かな口調で言う。

「どこで入手したのかは存じませんが、エリカさんの剣には神剣と呼ぶにふさわしい能力が秘められています。 大切になさいますよう」

この丁寧な物言いは鑑定屋としての商売用の口調なのだろう。

ロースーは同じようにして、革鎧とサークレットの効果についても教えてくれた。 革鎧は伸縮自在で着用者の体のサイズにピッタリとフィットし、決して切り裂けることも綻びることも燃えることもない。 サークレットにも神剣と同様に決して壊れない魔法と、それに加えて装備者の精神を常に冷静に保つという魔法がかかっているとのことだ。

サークレットにかけられた魔法についてロースが語るとき、サクランヌはしきりに首をかしげていた。

「ほんとうかなあ? その効果はホントにあるのかなあ? ねえエリカちゃん、どう思う?」

「どうって... 効果あると思いますよ。 実際、わたし戦闘中はいつも冷静ですから」

断言するエリカだったが、サクランヌは尚もしつこく首をかしげる。

「ほんとかなあ? はっ、まさかサークレットの効果が発揮されたうえで今の暴れっぷり...?」

いささか芝居がかったサクランヌの口調にエリカは苦笑するばかりであった。

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